クレイイールのお料理のやり方が解ってからはね、このお家の料理長をする事になってるカテリナさんも入れて、ノートンさんと3人でどんな味付けをしたらいいのか色々と作ってたんだよね。
そしたらね、あっという間に時間が経って、その間に僕のお家の工事が終わっちゃったんだ。
「それじゃあ、ルディーン様。館の最終確認をお願いいたします」
「はーい!」
と言う訳で僕はストールさんの案内で、できあがった僕んちを見て回る事になったんだけど、
「初めに来た時と、どう変わっておるかちと楽しみじゃのぉ」
「うむ。工事中は邪魔になるからと、作業しておるところには近寄らぬようにしておったからな」
その時にどうせなら一緒に見て回ろうよってロルフさんとお爺さん司祭様、それとバーリマンさんやこのお家に住むことになってるニコラさんたちも一緒に来ることになったんだ。
と言う訳で、まずは入り口から。
っていっても、ここま全然変わってないから扉を開けてみんなでぞろぞろとお家の中に入ってったんだよ。
そしたら前と変わってないお部屋が……。
「あれ? なんか増えてる!」
敷いてある赤い絨毯とか、お二階へ上がる二つの階段は前来た時とおんなじだったんだけど、お部屋の両脇の窓の近くにおっきくてきれいな飾りが掘ってあるすっごいテーブルと座るとこにふわっとしたクッションみたいなのがついてる椅子が4つずつついたテーブルセットが置いてあったもんだから、僕はすっごくびっくりしたんだ。
「ほう。来客用のテーブルセットじゃな?」
「はい。少々殺風景でしたので置く事に致しました」
ストールさんはね、そう言うと僕たちをそのテーブルのとこに連れてったんだよ。
でね、そこから椅子を一個とって、僕たちに見せてくれたんだ。
「こちらは冒険者ギルドからの提案で開発された、新しい座面を使用しております」
「新しい座面とな?」
今までにもふわふわのクッションがついてる椅子はあったんだって。
でもね、この椅子は今までのよりもすっごく座り心地がいいんだよってストールさんは言うんだ。
それを聞いたロルフさんはさっそくその椅子に座ってみたんだけど、そしたらね、ちょっとびっくりしたお顔になって何度も立ったり座ったりしたんだよ。
「確かにこれは今までの物とはかなり違うな」
「そうなの?」
「うむ。今までの椅子は座ると全体が沈み込んだのじゃが、これは何と言うか、座面に当たっておるところだけが沈み込んでおるのじゃ」
クッションだと座ったとこを中心にペコってへこむでしょ?
でもこの椅子は座ったとこだけ沈むから、何かとっても柔らかいのにしっかりと支えられてるような感じがしてとっても安定感があるんだって。
だからロルフさんは、座ってみてその違いにびっくりしたみたいなんだけど、
「このような椅子は、確かに今まで出会った事は無いが……どこぞの職人が考え付いたというのであれば合点がいくのじゃが、はて、冒険者ギルドはどこからこのような素材を見つけて来たのかのぉ」
それを冒険者ギルドがどうやって思いついたのか、とっても不思議だねって。
そしたらね、それを聞いたストールさんはにっこり笑ってこう言ったんだ。
「その素材自体はイーノックカウの森で取れる、旦那様もよくご存じの素材ですわ」
「わしも知っておるじゃと?」
「はい。これはブルーフロッグの背中部分のなめし皮を使って作られた椅子なのでございます」
ストールさんはロルフさんちのメイド長さんだから、ロルフさんに嘘つく訳ないでしょ?
でもこのお話を聞いたロルフさんは、ストールさんにそんなはずないよって言うんだよね。
「わしはブルーフロッグの皮で作ったベットで眠った事があるが、このような感触ではなかったぞ?」
「はい。冒険者ギルドからのお話によると、こちらはルディーン君から教えて頂いた、新たな加工技術で作られているとの事ですわ」
「えっ、ぼく?」
ロルフさんとストールさんのお話をぼーっと聞いてたらね、いきなり僕のお名前出て来たもんだからびっくり。
だからストールさんに何の事? って聞いてみたんだけど、そしたら笑いながら忘れちゃったの? って。
「本来であれば傷が多くて廃棄するはずのブルーフロッグの背の皮を、傷の無い部分だけ丸い筒状に切り抜いてまとめることで再利用する方法をルディーン様から教えて頂いたと聞いておりますが?」
「あっ、そっか。これってあの方法で作った椅子なんだね」
そういえば僕、前に冒険者ギルドでニールンドさんとブルーフロッグの背中のなめし皮でスプリングもどきを作ったっけ。
でもブルーフロッグの背中のなめし皮は目の前にある椅子の座るとこなんかよりぶ厚かったもんだから、ちゃんと教えてもらうまで解んなかったんだよ。
だからそれをストールさんにお話したら、そこは商業ギルドの人たちが考えた工夫なんだよって教えてくれたんだ。
「今までは一枚の皮をそのまま使っておりましたでしょう? だから厚さを変えようなどと誰も考えもしなかったそうなのです」
「そっか。丸くくり抜いた奴だったら、短く切れるもんね」
「はい。そのおかげで、この椅子のような形状も簡単に作れるようになったそうですわ」
ストールさんに言われてもう一回椅子を見てみたらね、座るとこがちょこっとへこんでて、両端と後ろの方がちょっと盛り上がってるような形をしてたんだ。
「ほんとだ。変な形になってる」
「その通りでございます。今までも木でできた座面の椅子にはこのような形のものはありましたが、コットンを使った座面ではつぶれて硬くなるのが早くなるからと膨らんだものしかなかったそうなのです」
ホントはこんな形にした方が絶対座りやすいって解ってるのに、早く悪くなっちゃうからって今まではくっりょん付きの椅子では作れなかったんだって。
でもブルーフロッグの背中のなめし皮はとっても丈夫だから、ずーっと使っててもへこんで戻らなくなるなんて事ないもん。
それにね、木の座面だとこの形を作ろうと思ったらすっごく大変でしょ?
でもブルーフロッグの背中のなめし皮だったらちょうどいい長さに切るだけだから、座り心地はいいのに作るのがとっても簡単なんだってさ。
「これは試作段階のものらしいのですが、ルルモア様から館の完成祝いにとルディーン様に送られたものなのです」
「そっか。じゃあ村に帰る前に冒険者ギルドに行って、ちゃんとありがとうって言わないとだね」
僕はルルモアさんやニールンドさんのお顔を思い出しながら、ちゃんと忘れないようにしないとって思ったんだ。
前に作ったブルーフロッグの背中のなめし皮で作ったスプリングもどき、ちゃんと実用化に向かっているようです。
これ、今までは費用をかけて廃棄していたものなので、かなり安く作れるんですよね。
そしてこれを使えば、今までは雨に濡れてしまうからと置けなかった御者席にもクッションを置くことができるように!
ただ、ルディーン君の家の馬車は全く揺れない魔道馬車なのでもう要らないのですがw